研究室概要

(1)研究室の説明

本研究室では,”材料の強度や破壊,変形”に関する研究を行います.産業界で実際に使用されている機械において,材料の破壊は事故と直結し,大きな被害を生じさせます.このような破壊事故を防ぐためには、材料強度の研究が不可欠です.また,燃費向上,生産コスト低減,安全性向上など機械の性能を向上させるためには,新規材料を開発することおよびその材料の破壊メカニズムを解明することが必要です.本研究室では,材料の強度特性を評価するとともに、なぜ壊れたのか?なぜ強度が向上したのか?などを明らかにします.そして,『事故のない安全な社会の実現』および『機械の高性能化によるより良い社会の実現』に貢献します.主な研究内容は以下のとおりです. 

①材料の強度評価および破壊メカニズムの解明
産業界で使用されている機械において,材料の破壊は事故と直結し,大きな被害を生じさせます.このような破壊事故を防ぐためには,材料強度の研究が不可欠です.また,燃費向上,生産コスト低減,安全性向上など機械の性能を向上させるためには,新規材料の開発および破壊メカニズムの解明が必要です.本研究室では,材料の強度試験を行い,材料の特性を評価するとともに,なぜ壊れたのか?なぜ強度が向上したのか?などを調べます.



②ナノ・マイクロスケールにおける現象の解明
材料に負荷をかけると,目視では大きな変化が生じていなくても,ナノ・マイクロスケールでは様々な変化が生じます.そのようなナノマイクロスケールで発生する現象によって,材料の破壊は引き起こされます.そのため,本研究室では,ナノ・マイクロスケールの実験およびシミュレーション方法を開発し,観察を行うことで,ナノ・マイクロスケールで起こっている現象を明らかにします.例えば,原子の運動や転位の運動,結晶の変形をシミュレーションすることで,実験では明らかにすることができない現象を解明します.

③材料特性や強度を予測する手法を開発
近年,シミュレーション技術が進歩しており,実験を行わずにシミュレーションで破壊や強度を予測することが求められています.そのために,シミュレーションを用いて,材料や構造物の強度を予測する技術を開発します.例えば,発電所が地震のような過大荷重を受けた場合を想定して,過大荷重下でのき裂進展シミュレーション手法を検討しています.



④材料特性の評価手法の開発
新しい材料の評価を行う場合には,従来の手法ではうまく評価が行えない場合があります.そのようなときには,新しい実験手法を開発する必要があります.また,実際の製造現場では,より簡単により安く材料強度を測定することが求められます.そのため,より高精度で,より簡単な強度試験方法を開発します.
⑤人工知能を用いた損傷評価法の開発
橋や化学プラントにおいて,腐食の検査は安全のために重要です.しかし,腐食検査には大きな労力がかかります.そこで本研究室では,人工知能を用いて画像から錆を自動検出する技術の開発を行っています.それにより,腐食検査の高効率化を目指しています.また,破断面から破壊機構を自動判別する技術の開発も行っています.

 

すべての機械は材料から作られます.ですので,材料強度を必要としない機械開発はあり得ません.そのため,材料強度の研究は機械系のすべての分野の役に立つ研究といえます.実際に,本研究室では多くの企業や学協会と共同研究を行い,本研究室の研究テーマのほとんどは共同研究です.来年度は,航空機,自動車,発電プラント,ゴルフクラブなどの幅広い分野を対象として研究を行います.このように,材料強度は社会と密接に関係した分野ですし,皆さんの研究結果が社会の発展に直結する分野となっています.近い将来,皆さんの研究成果をもとに機械製品が作られるかもしれません.
 また,材料強度の研究というと”材料を壊して終わり”というイメージを持っているかもしれません.しかし,材料強度の研究を行うためには,試験装置の設計製作を行ったり,実験装置の制御を行ったり,シミュレーションを行うためのプログラミングを行ったり,人工知能を作成したり, と様々なことが必要になってきます.そのため,材料強度に興味がある人はもちろん,機械や装置を作りたい人,プログラミングやシミュレーション,AIに興味がある人も是非志望してください.
 2023年度は,修士2年生3名,1年生5名の大学院生が所属予定です.(このうち,3名は熊澤研究室所属).研究テーマは1テーマ/1人を予定しています.しかし,類似の研究テーマごとにグループを作り,仲間や先輩と協力しながら活動を行います.

(2)研究テーマ(仮)

(1)ハイブリットロケット用タンクの疲労強度向上手法の検討(大学および企業との共同研究)
(2)逆解析を用いた耐熱コーティングの弾性率評価(火力発電用耐熱コーティングの研究)
(3)自動車用ベアリングのインデンテーション法を用いた強度予測(軸受メーカとの共同研究)
(4)鋭敏化二相ステンレス鋼のマルチスケールき裂進展評価(ポンプメーカとの共同研究)
(5)新材料・調和組織材のマルチスケール解析に基づく強度評価(大学との共同研究)
(6)3Dプリンタの疲労強度予測手法の開発(企業との共同研究)
(7)地震による大変形下での疲労き裂進展シミュレーション手法の開発(発電機器メーカとの研究)
(8)人工知能を用いた疲労き裂の自動分類(大学,研究所,企業との共同研究)
(9)水素による疲労き裂進展加速機構の解明(水素の影響の解明)
(10)航空宇宙用先進複合材料の極低温特性に関する研究(連携大学院 JAXA との共同研究)

(3)連携大学院(熊澤研究室)進学希望者

材料強度学(蓮沼)研究室は,連携大学院・宇宙航空研究開発機構(JAXA)の熊澤研究室に進学を希望している学生に対して,共同研究を実施しています(1名以内).すなわち,蓮沼研究室の一員として卒業研究を履修し,JAXAの研修生となって熊澤先生の指導も受けて研究を遂行します.連携大学院を希望している学生は,熊澤先生に電子メールを送って予め見学および面接を受けてください.また,卒業履修申込票に明示してください.