電子スペックルパターン干渉法
Electronic Speckle Pattern Interferometry


レーザー光2光を粗面に照射すると,粗面の各点で乱反射した光波が像面でランダムな位相関係で重ね合わせられることによって,図1のようなスペックルパターンとよばれる干渉模様が生じる.変形前後のスペックルパターンをCCD カメラで記録し,両者の差の絶対値をとると,変形による位相差が2π変化するごとに,差画像の明暗が1周期変化する干渉縞を得ることができる(図2).このようにして,変形の分布を,光波の2π位相変化を単位とする線として描かせることができる.得られる縞パターンは,CCD カメラとコンピュータさえあれば,すべてデジタル処理で結果が得られることから,電子スペックルパターン干渉法と呼ばれる.

図1

図2

図3

図3は鉛直方向に感度を持つ光学系である.測定物を含む全ての光学素子は除振されている状態を考える.測定物に一つのレーザーから分けられる照射光を,測定面の法線に対して対称な2方向から照射し,法線方向からCCDカメラで記録するとレーザー光の照射方向における変位分布を求めることができる.

ここでθ が時間と空間の周波数とすると光の状態式Aは,虚数部分を考えないものとすると,

(1)

と表せる.これにより光の強度Iは,

(2)

と表される.粗面に照射される2光の状態式をA1,A2とすると2光の合成波A1,2は,

(3)

と表せる.同様に合成波の強度I1,2は

(4)

と表される.このように2光の光路差によって生じる位相差ϕ=θ1 − θ2 により光の干渉が起こり,像面にスペックル模様が現れる.ここで簡単のために,合成波の強度を,

(5)

と表す.ESPIでは測定物の変位前の画像と変位後の画像の強度の差の絶対値を取り差画像を得るため,変位前の画像の強度をI1,2,変位後の画像の強度をI’1,2とすると,

(6)

と表せる.変位前後による2光の位相差の増分をΔϕ=ϕ’−ϕとする.最後の式を見るとsin(Δϕ)により干渉縞が形成され, sin(ϕ+Δϕ)の部分がノイズのように現れることがわかる.この変位前後での光の位相差の増分Δϕ と変位量uとの関係は,レーザー光の波長をλ,照射角度をαとすると,

(7)

と表せる.これにより干渉縞が観測できた場合,干渉縞一本あたり,つまりΔϕ=2πのときの変位u0は,

(8)

と表せる. ESPIの模式図を図4に示す.レーザー光2光の干渉により,強め合う箇所と弱め合う箇所が生じる.レーザーの波長は常に進行するため,それに伴い干渉が起きる箇所も図中の矢印の様に進んでいく.このような光の干渉が起きることで,この場合上下方向からレーザー光を照射しているため,感度を持つ上下方向に粗面が変形すると,上述した原理により干渉縞が現れ,測定対象の変位が測定できる.

図4