目的 |
◎地面効果の翼と地面の距離の関係
Carter, 1961年
本研究は,トーイングタンクを用いた実験により,翼と地面の距離が揚力特性に及ぼす影響を調査したものである.結果として,地面に近づくにつれて揚力係数が増加し,特に距離が翼弦長の30%以下になるとその傾向が顕著になることが示された.抗力への影響は限定的であった.
Turner, 1966年
Turnerは,翼幅に対する相対距離が地面効果に与える影響を体系的に調査した.特に,地面との距離が翼幅の約33%のとき,揚力係数が最大で約33%増加することを示した.この研究は,初期の地面効果研究において定量的知見を提供する重要な位置づけにある.
Moore et al., 2002年
Mooreらは,NACA 0012翼型を用いた風洞実験を通じて、翼と地面の距離による揚力および抗力の変化を解析した.地面との距離が小さい場合,翼下面と地面の間に収束–発散流路が形成され,それが揚力を減少させる原因となることを明らかにした.
Ahmed et al., 2007年
Ahmedらは,NACA 4412翼型に対して迎角0~10度の範囲における地面効果を実験的に調査した.ライドハイトが小さくなると抗力が増加する一方,揚力の変化傾向は迎角および下面と地面の間の流れ場形状に強く依存することを発見した.この研究は,迎角依存性を考慮した地面効果の理解を進展させたものである.
Baddoo et al., 2019年
本研究は,理論解析に基づいて地面効果の厳密解を導出し,翼と地面の距離が空力特性に与える影響を数式的に定量化したものである.地面との相互作用によって生じる誘導抗力の変化や,流れの分布に関する新たな視点を提供している.
◎地面効果と翼の角度の影響
Tomaru & Kohama(1991年)
本研究では,東北大学の低乱流風洞を用いて,5種類の翼型モデルを対象に,迎角と地面とのクリアランスが揚力,抗力,モーメントに与える影響を実験的に調査した.結果として,迎角が増加するにつれて揚力係数が上昇し,地面との距離が小さい場合には抗力係数も増加する傾向が観察された.特に,翼後縁と地面との距離が小さい場合,揚力の増加が顕著であった.
Kawazoe & Morita(2004年)
本研究では,低速風洞内でデルタ翼のローリング運動を模擬し,地面効果下における高迎角時の動的特性を解析した.迎角が大きい場合,地面効果により揚力,抗力,ローリングモーメントにヒステリシスが生じ,これらの力とモーメントが増幅されることが確認された.特に,迎角が増加すると,デルタ翼の風上側に形成される渦の強度が増し,地面との距離が小さい場合には渦の崩壊が早期に発生することが示された.
Lee & Ko(2018年)
本研究では,細長いデルタ翼を対象に,地面効果が先端渦と空力特性に与える影響を実験的に調査した.迎角が小さい場合,地面効果により揚力と抗力が増加し,先端渦の強度と回転速度が増すことが確認された.また,地面との距離が小さい場合,先端渦の崩壊が早期に発生し,揚力の減少と失速の早期化が観察された.
Koçak & Yavuz(2022年)
本研究では,非細長デルタ翼を対象に、迎角と地面との距離が空力性能および縦方向の静的安定性に与える影響を風洞実験により解析した.迎角が増加すると,地面効果により揚力と抗力が増加し,特に迎角が7度付近で最大の空力性能が得られることが示された.また,迎角と地面との距離の組み合わせにより,翼の安定性特性が変化し,先端渦の再付着や強度にも影響を与えることが確認された.
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