課題 | デトネーションについての研究 |
背景 |
デトネーションとは衝撃波を伴う超音速火炎伝播現象であり,その高温高速の特性を活かして推進機関の熱効率の向上が期待できる.パルス・デトネーション・エンジン(Pulse Detonation Engine, PDE)は管状の燃焼器内で高周期的にデトネーションを発生させることで推力を得るエンジンである(図 1).デトネーションを発生させるにはデフラグレーション・デトネーション遷移(Deflagration to Detonation Transition, DDT)メカニズムにより,比較的弱い点火源で予混合ガスを着火し,火炎をデトネーションまで加速させるという方法がある(図 2).さらに,PDEの実用化のために,デトネーションへの遷移時間と遷移距離が十分短い必要がある.燃焼管内に擾乱源として連続した障害物を置くことでDDTを促進する方法が知られているが,そのメカニズムと障害物の最適な配置が解明されていない.

Figure 1. Pulse detonation engine.
※遠藤琢磨 八房智顕 滝史郎 笠原次郎 Sci. Tech. Energetic Materials,Vol.65, No.4 2004

Figure 2. 3 methods to the onset of detonation.
※笠原次郎 松尾亜紀子 遠藤琢磨 日本流体力学会誌,Vol.26, No.3 2007 pp.205-213
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目的 |
水素空気予混合気のデトネーション助走距離を短縮するために適切な障害物配置と形状を探究する
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方法 |
実験と数値計算で矩形燃焼管内に高さ 10 mm,幅 10 mm,長さ 30 mm の矩形障害物を設置して,障害物の設置位数を変えて,デトネーション遷移距離を測定する.障害物から出た渦と局所爆発の関係性を確かめるために,四角い断面を持つ障害物と渦の発生しにくい上部丸めた障害物と比較して研究を行った.

Figure 3. Experimental appararus.
デトネーション過程の可視化については,ハイスピードカメラで火炎の伝播様子を撮影する.
同時にANSYS Fluentを使って,数値計算を行い,実験結果と比較する.計算領域は燃焼管を模擬し,x⽅向(流路方向)1016 mm,y⽅向(高さ方向)30 mmの矩形とした.計算格⼦はx⽅向6096点,y⽅向180点,合計約100万点である.

Figure 4. Schematic of computational grid.
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結果 |
当量比1,初期圧力 100 kPa の条件において数値計算を行った.点火位置から障害物までの距離dを50 mm と150 mm にした.縦軸は無次元助走距離を示す.4つのケースの中で,d = 150 mm,四角い断面の障害物の助走距離が最も短い.

Figure 5. Run-up distance compared among 4 cases.
d = 50 mm の比較から,障害物の形がデフラグレーション段階での火炎伝播速度に影響を与えた.

Figure 6. Flame propagate speed compared between squared and top-rounded obatacle for d = 50.
d = 150 mm の比較から,障害物の形が局所爆発の発生に影響を与えた.


Figure 7. Local explosion compared between squared and top-rounded obatacle for d = 150.
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