課題 | ポンプキャビテーションによる変動に関する研究 |
背景 |
流体機械内において,局所的に圧力が飽和蒸気圧以下になると,その部分の液体から気泡が発生する.この現象がキャビテーションである.キャビテーションには,同一周期同位相で膨張,収縮を繰り返すキャビテーションサージと羽根車に対して回転しているように見える旋回キャビテーションという現象がある.

Figure 1. 水の飽和水蒸気圧線図

Figure 2. キャビテーション

Figure 3. 船のスクリュー
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目的 |
キャビテーションによって発生した気泡は,凝縮することで,騒音や振動の発生,揚水能力の低下,ポンプの部品の壊食現象といった問題を引き起こす.実際にキャビテーションの影響を受ける例として,船のスクリューや水車が挙げられる.船のスクリューは回転数を上げると,スクリュー周辺にキャビテーションが発生し,推進力が減少する.これらのことから,キャビテーションの抑制法を確立する必要がある.それには,キャビテーションによって発生する騒音や振動といった問題の原因となる,圧力変動について知る必要がある.そこで本研究では,遠心ポンプ内に発生するキャビテーションとその圧力変動の関係性について調査した.
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方法 |
実験と数値計算を行ってキャビテーションについて研究をする.本研究では,商用ソフトウェアANSYA CFX 2022 R2を用いて数値計算を行う.そして,非定常計算で得られたデータを基に,FFT解析を行う.本実験装置は閉ループキャビテーショントンネルと呼ばれ,タンクに注水をし,真空ポンプで減圧を行い,水を流し,ポンプに発生するキャビテーションを観察する.

Figure 4. 計算領域

Figure 5. 測定点

Figure 6. 実験装置
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結果 |
図10はキャビテーション数0.12のときの羽根車の様子であり,白色で表されている部分は気相体積割合が0.1以上の場所で,キャビテーションを示す.キャビテーションが羽根ごとに伸び縮みを繰り返し,羽根車に対して回転しているように見えることから旋回キャビテーションが発生していることが確認できる.また,図11は圧力係数とキャビテーション体積の変動を表したものである.
青い線が圧力係数,赤い線がキャビテーション体積であり,圧力係数とキャビテーション体積が逆位相で変動していることが分かる.図12はキャビテーション数0.12のときの羽根車の様子である.翼の負圧面においてキャビテーションが発生していて,伸び縮みを繰り返し,羽根車に対して回転しているように見えるため,数値計算同様,旋回キャビテーションが発生していることが分かる.

Figure 7. 数値計算による羽根車の様子

Figure 8. 圧力係数とキャビテーション体積の変動

Figure 9. 実験による羽根車の様子
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