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課題プラズマ・アクチュエータ
背景  
1.緒論
 水や空気を駆動させるデバイスとして,電気流体デバイスが注目されている.電気流体デバイ スとは電極間に電位を与えることにより,流体が電場によるクーロン力を受けて加速され流れが 生じる現象を利用したデバイスである.デバイスの構成はシンプルで,ターボ機械のように羽根 車やモータを必要としないため,小型化や平坦化が可能といった利点がある.
 近年,水や空気を駆動させるデバイスとして,電気流体デバイスが注目されている.代表的なものには誘電体バリア放電,コロナ放電を用いたデバイスなどがある.  
まずは誘電体バリア放電について,デバイスは2枚のシート状の電極およびそれに挟まれた誘電体より構成されており,高電圧の交流を印加することで誘電体表面に放電が生じ,流れが発生する.
次にコロナ放電について,デバイスとしては,陽極と陰極が形状的に非対称で,片方の電極にエッジがあれば良いのでデバイスの自由度が高いことが特徴である.また,直流電源で駆動するため電源設計も容易である.


Figure 1. 誘電体バリア放電プラズマアクチュエータ.



Figure 2. コロナ放電プラズマアクチュエータ.

 誘電体バリア放電式はその小型で平坦な形状から,流体制御分野で注目されている.
構造物に張り付けることで剥離低減等の効果があり,研究例としては航空機翼の剥離低減や円柱周りの流れの制御などがある.
コロナ放電式は3次元的な形状が多く考案されているが,平坦な形状の研究例は少なく,誘電体バリア放電式のような流体制御分野での応用例は少ない. また,針対平板電極において,針電極の曲率半径が小さい方が高性能になることは分かっているが,平板電極の最適形状は明らかになっていない.
 誘電体バリア放電式はその小型で平坦な形状から,流体制御分野で注目されている. 構造物に張り付けることで剥離低減等の効果があり,研究例としては航空機翼の剥離低減や円柱周りの流れの制御などがある.
 コロナ放電式は3次元的な形状が多く考案されているが,平坦な形状の研究例は少なく,誘電体バリア放電式のような流体制御分野での応用例は少ない. また,針対平板電極において,針電極の曲率半径が小さい方が高性能になることは分かっているが,平板電極の最適形状は明らかになっていない.


Figure 3. 翼剥離低減(プラズマアクチュエータOFF).


Figure 4. 翼剥離低減(プラズマアクチュエータON).

目的  これまでコロナ放電を用いたデバイスは,線-網系,針-穴あき版系などの3次元的な形状を持つ デバイスが多く考案されているが,DBD-PAのような平坦な形状を持つデバイスの研究は少なく, コロナ放電式のようによりシンプルな構造かつ,より汎用性の高い平坦な形状を持つデバイスの 開発が望まれる.
 本研究では,コロナ放電を用いた電気流体デバイスを流体制御分野へ応用することを目的とした.  そこで,DBD-PAのような小型で平坦な形状の電気流体デバイスについて,様々な利点のあるコロ ナ放電を用いたコロナ放電電気流体デバイスCD-PA(Corona Discharge - Plasma Actuator)を考 案し,その流れ場解析および電場解析を行った.


Figure 5. 針対平板電極間のストリーマコロナ放電.

方法 2.作動原理
 針電極と平板電極を対向させて電圧を加えると電場は針電極に集中し,針電極の周囲だけが電離 する.こうした局所的な絶縁破壊が起こる放電をコロナ放電という.針電極を陽極,平板電極を陰 極とした場合を正コロナ,針電極を陰極,平板電極を陽極とした場合を負コロナといい,どちらの 場合においても鋭利な針電極において放電が発生する.負コロナの場合は,陽イオンの衝撃による 陰極からの二次電子放出によって針陰極から電子を供給できることから,安定な定常グロー放電( 10Pa程度の低気圧において,二次電子放出や電界放出によって維持される放電)が生じる.一方, 正コロナの場合には平板陰極からの二次電子の供給は期待できないため,針電極付近の空間で局所 的に電子の発生と電子の倍増を行わなければならない.そのため放電は不安定であり,間欠的にな る.本研究では正コロナ放電式を採用している.
 コロナ放電時,針陽極で高電場が発生し,針陽極周囲の大気が電離し,針近傍の気体の一部がイ オン化する.イオンは電荷を持つため,電極間の電場によるクーロン力で針陽極から陰極に向かっ て加速されるこれをイオン加速と言い,.加速されたイオンと大気中の中性粒子が衝突することで 運動量交換が起こり,これにより陽極から陰極へ向かう流れが発生する.

3.実験装置
3.1 電源装置
 本実験で用いた電源装置は,10段のCW回路(Cockcroft- Walton circuit)で昇圧し,冷陰極管 インバーターをパルス電源として使用した.冷陰極管インバーターに印加する電圧を変えることで 電極への印加電圧を調節した.
3.2 電極構成
 図6に電極構成を示す.陽極と陰極を水平に設置し平坦な形状とした.陽極は銅製の平板の先端 を45°としたトゲ平板を用い,陰極は銅製の平板電極とし,陰極の平板電極を10 mm×10 mm平板, 30 mm×10 mm平板,60 mm×10 mm平板と変え実験を行った.電極間距離は5 mmとし,トゲ平板およ び陰極平板には厚さ0.05 mmの銅テープを用いた.電極はガラス板に貼り付け,これを下壁とした. 作動流体には大気圧常温の空気を用いた.


Figure 6. 電極構成.

3.3 流れ場の可視化実験
 実験は流れ場の可視化を行った. アクリルボックス内にコロナ放電プラズマアクチュエータを設置し, 流れ場をスモークおよびレーザーシートにより可視化し,それをPIV解析にかけることで流れ場の流速ベクトルを得た.


Figure 7. 可視化概略図.

4.数値計算方法
 数値計算には解析ソフトANSYS CFX 2020R2 を使用し,定常電場計算を行った.支配方程式は電位に 関するラプラス及びポアソン方程式である.初期条件として陰極に電位を与え,陽極はグランドと し,計算領域の端部は電流密度ゼロとした.また,計算時間削減のため,電極中央断面を対称境界 としてシンメトリー計算を行った.


Figure 8. 数値計算の概略図.

結果 5.実験結果
 可視化および,PIVにより得た速度ベクトルを示す.流速は0.25秒間の時間平均流速を示している. 動画およびベクトルより電極間で加速され,陰極から陽極へ向かう流れが生じていることがわかる. またベクトルより,誘起される流速は平板電極の幅方向の辺の長さが短いほうが大きくなることが分かった.


Figure 9. 垂直断面可視化動画.


Figure 10. PIV結果.

6.数値計算結果
 次に,数値計算結果を示す.左から幅方向長さ10mm,30mm,60mmの結果である. どちらも針先近傍で高い電場強度となっており,最大電場強度はどの電極におい ても1.2×10^8V/mであった.このことから,平板電極の幅方向の長さを変えて も最大電場強度は変化しないことが分かる.また,平板電極の幅方向の辺の長さ を長くすると電場もそれに合わせて広がって分布していることが分かる.


Figure 11. 平行断面可視化画像.

 次に,数値計算結果を示す.左から幅方向長さ10mm,30mm,60mmの結果である. どちらも針先近傍で高い電場強度となっており,最大電場強度はどの電極におい ても1.2×10^8V/mであった. このことから,平板電極の幅方向の長さを変えて も最大電場強度は変化しないことが分かる.また,平板電極の幅方向の辺の長さ を長くすると電場もそれに合わせて広がって分布していることが分かる.

Figure 12. 数値計算結果.