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課題ポンプ水車の性能評価
背景  Figure 1に一日の電力需要と供給のグラフを示す.昼夜の電力供給差の調整などの役割を,余剰電力を使用して水をくみ上げ,その水で発電する揚水発電が担っている. Figure 2に揚水式水力発電の概要を示す.揚水発電では,回転方向を切り替えることによって,1台で揚水(ポンプ運転)と発電(水車運転)の両方の機能を 切り替えることが出来るポンプ水車が用いられている.
 ポンプ水車は水車運転時に電気的なトラブルなどによって負荷遮断が発生するとガイドベーンを緊急閉鎖させ, 流量を急激に減少させることで,ポンプ水車の停止を行う.それにより,ポンプ水車内の流れは大きく設計点から外れ, その時の特性曲線がS字特性と呼ばれるS字状を描くことが知られている.S字特性に陥ると,ポンプ水車は大きな 圧力・流量変動を引き起こし,大きな振動が生じる.この振動現象はS字特性と流体振動現象に密接な関りがあると考えられている. しかし,そこで発生する流体振動の詳細やメカニズムは解明されていない.Figure 3はポンプ水車のS字特性の一例である.
  

Figure 1. Daily electricity demand and supply.(1)


Figure 2. A pumped-storage hydroelectricity.(2)


Figure 3. Pressure characteristic curve with Exp.

参照
(1)https://www.kepco.co.jp/energy_supply/supply/denkiyoho/availability/reference_juyou.html
(2)https://www.power-academy.jp/electronics/report/rep01100.html
目的  実験と数値計算によって,ポンプ水車の水車運転時において,流量,ガイドベーン開度を変化させ,ランナに掛かるトルクと入口, 出口の流量部および,ランナ・ガイドベーン間の圧力を測定し,またポンプ水車内部流れや出口流れに観察することで,ポンプ水車 に発生する流体振動について調査する.そのため,本研究では,異なる入口羽根角のポンプ水車を複数作成し,実験・数値計算を実行 し,理論解析の妥当性を評価するとともに,S字特性の原因について言及することを目的としている.
Figure 4に示すように,入口羽根角の大きさが性能曲線における,S字領域に影響していることが確認できた.

Figure 4. Theoretical analysis about Pump-Turbine.

方法  Figure 5に実験装置全体の概略図を示す.実験装置は,主にタンクと2つの遠心ポンプからなっている.2つのポンプのうち,一方は水の汲 み上げのためにブースターポンプとして,もう一方はポンプ水車の水車運転時の性能実験のために羽根車を逆回転させ,供試ポンプ水 車として用いた.供試ポンプ水車は遠心式ターボポンプをインペラ部分を取り除き,ガイドベーンおよびランナーを設置する.また,軸にはトルク計を取り付ける. ポンプ入口フランジ部分はポンプ出口フランジとして改造し,アクリルで製作する.
 Figure 6に本研究で用いるポンプ水車の概略図と圧力測定点について示す.圧力測定点は,供試ポンプ水車の上流入口と下流出口の2点 (Pin,Pout),ランナーとガイドベーンの間にケーシングの舌部から反時計回りに4点(P1~P4)とし,ケーシング舌部を0°とすると,72,142,182,242°となっている.
 Figure 7に計算格子を示す.数値計算には,流体解析ソフトANSYS - CFX 19.2を用いた.



Figure 5. Experimental facilities.


Figure 6. Schematic of experimental pump-turbine.


Figure 7. Computational model of pump-turbine.
結果  Figure 8に実験およびシミュレーション結果と理論値を比較したグラフを示す.実験値とシミュレーション結果は近い曲線を描いている.S字を描いていることも確認できる.
 Figure 9に損失分布を示す.横軸は半径比,縦軸は圧力係数である.設計流量未満の条件下では,羽根車入口付近で損失が拡大していることが確認できる.
 Figure 10にトルク分布を示す.横軸は半径比,縦軸はトルク係数である.設計流量未満の条件下では,羽根車がポンプとして作用している領域があることが確認できる.


Figure 8. Pressure characteristic curve.


Figure 9. Loss distribution obtained from the CFD results.


Figure 10. Runner output distribution obtained from the CFD results.