「暗い話」をしてから2年

理工総研ニュース(2003年)に掲載


 思い出せば,センターニュースに原稿を依頼されて,「暗い話」を書いてから2年近くが経ってしまった.明るさは見えてきたのだろうか?少し検証してみる.

(1) 科研費は昨年も採択されなかった.何年連続完敗したのか思い出せなくなってきた.何が悪いのかわからないまま,今年も申請した.本当に正しく評価されているのだろうか?不採択になった理由として評価点を貰っただけでは,どうも納得が行かない.

(2) 額が広くなったような気がする.特に,昔はこめかみに近かった生際のコーナーがどんどん頭頂部に上り続けている.いわゆるアトムである.髪の間から見える頭皮の可視化率も増大を続けている.この2年間も確実に鏡を見たくない気持ちは強くなった.しかし,白髪の増えたヒゲを剃る時は避けられない.

(3) 阪神タイガースは相変わらず弱い.しかし,新庄は大リーガーになってしまった.明るい奴は運が向いてきたときに強い.新庄は良くプロ野球を辞めずに追い風の時期まで待てたと思う.いまだに阪神の応援を続ける筆者も「いつかは・・」と,我慢したいと思う.カッコイイ奴は嫌いだけれど,新庄を見習いたい.

(4) H2Aロケットは何とか成功を続けているが,原子力発電は東京電力の損傷隠しが発覚して大変な状況になった.原発が止まっても,電力供給には問題ないと思うが,二酸化炭素は増える.もし,中東で戦争になったら,今年の夏はまずいかもしれない.

(5) 研究室の設備として,ナノ硬さ測定と原子間力顕微鏡観察が同時に可能な装置や,レーザースペックル干渉で微小領域の非接触ひずみ計測のできる装置が入った.微小材料の研究ができないという言い訳は出来なくなった.

(6) CATで応募したCOEプログラムが採択された.過去2年間で最も明るい話題だった.採択の審査において,暗い分野にいる筆者の貢献は無い.しかし,成果の審査は受けることになる.実にヤバイ,と思っていたら,企業に勤めていた抜群に優秀な卒業生がCOEプログラムを利用して博士課程に戻ってくることになった(入学試験はこれからですが・・).明るい研究生活に向けて気合が入る.

(7) キャンパス移転が目前になった.正直言って,7年ほど前の青学採用試験で1号館に入ったときの衝撃は今も忘れない.「これが青学か!!」と明るいイメージは木端微塵に崩壊した.新キャンパスの建物は,外観を見る限り期待できる.引越図面のレイアウト図には悩まされたが,多分今よりかなり広い.キャンパス移転が今後最大の明るい話題になることを期待したい.

 書き進んでいるうちに「明るい話」になってきた.ペンを置くチャンスである.