日本材料学会コラム〜治療〜
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治療(1):虫歯
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奥から2番目の歯が随分前から痛くなっていました。歯槽膿漏の診断を受けて、長期間の通院生活の末、歯根である2本足の股の部分が歯茎の外に出てしまいました。歯科医師は平気な顔で、これからは股の間に歯間ブラシを入れて掃除するようにとの指示を出しました。前面からだけでなく、L字型の歯間ブラシを歯の裏側からも挿入するようにとの指示でした。見えないので至難の業でした。それでも1年以上、歯の股間をブラッシングし続けて持ち堪えましたが、ついに再発の日がやってきました。再度の長期通院を覚悟し、うなだれて受診すると、歯科医師は「抜いちゃってもい〜い?」と平然と言い放ちました。その後、部分入れ歯を毎食後に洗浄する生活となりました。
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治療(2):爪水虫 -
足の水虫が直らないので、皮膚科の診察を受けると、爪水虫だと診断されて、塗り薬が処方されました。現在は有効な飲み薬もあるようです。素人目にも、爪の上から薬を塗っても効き目はなさそうに思ったので、指の先端に薬の浸透作用を期待して塗ってみました。やはり効果はなさそうです。そこで、爪と指の小さな隙間に耳かきで薬を押し込んでみることにしました。そうすると、爪と指の隙間は徐々に広くなり、痛みを感じることなく、塗り薬をかなり奥まで押し込めるようになってきました。当然、医師には相談していません。爪の奥まで薬が届くようになると、やがて正常な爪が生え始め、耳かきの侵入範囲を押し戻して行きました。私は清潔な足を取り戻しましたが、絶対に真似をしないでください。
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治療(3):魚の目 -
大学院生の頃、イボイボ(健康)サンダルが流行ったので愛用していました。今でも売られていますが、私は絶対に手を出しません。実は、足の裏が魚の目だらけになった経験があります。皮膚科を受診すると、医師は-196℃の液体窒素にほぐした綿棒を入れ、直ちに魚の目に押し当てました。ブスブスと音を立てて液体窒素が蒸発し、魚の目は白く凍結しました。凍結部分が魚の目を貫通し、健全な皮膚に到達して私が悲鳴を上げると、綿棒を外してくれました。涙目の私が「自分でやっても良いですか?」と聞くと、医師は「液体窒素がないでしょう!」と勝ち誇りました。その後二度と受診はせず、低温脆性を研究している友人から、実験で残った液体窒素を恵んでもらって完治に漕ぎ着けました。
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治療(4):めぼう -
高知では「ものもらい」のことを「めぼう」と言います。岐阜にいた頃「めぼう」になったので、眼科を受診すると「めんぼ」だと言われました。調べてみると、
全国各地で呼び方が違っているようですが、「めぼう」と呼ぶのは高知だけで、京都では「めいぼ」、宮城では「ばか」が多いそうです。最初は、何となく目がおかしいと感じるだけでしたが、突起が出現したので観念して受診した旨を説明しました。初診では目薬が処方され、必死で差しまくりましたが、突起の成長を止めることができず、2度目の受診となりました。眼科医師は「では、切開します!」と言い放ち、メスを目に近付けてきます。目薬の処方は、この瞬間を覚悟させるための布石なのです。思い出しただけで寒気がします。
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治療(5):心不全 -
母が85歳になった頃、大動脈弁狭窄症という診断を受けました。心臓から全身の大動脈に血液が送り出される弁の動きが悪くなる病気です。治療法は、心臓の中にある弁を交換するしかないそうです。高齢の母が大手術に耐えられるとは思えず万事休すでしたが、高齢者の耐えられるTAVIという新しい手術がありました。足の付け根の大動脈からカテーテルを入れて、人工弁を心臓まで運んで置いてくるというのです。そんなことが動いている心臓にできるとは思えず、医師に質問すると、心臓ペースメーカーを同時に入れて、追従できないくらい速いペースを送ると、一時的に心臓を止められるというのです。凄い技術です。人工弁の耐用年数が5年だということでしたが、母は7年目の検診をクリアして、耐用年数延長の実績を作っています。
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