日本材料学会コラム〜におい〜
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におい(1):牛乳パック
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友人のアパートに泊めてもらった時、喉が渇いたので冷蔵庫を開けると、1Lの牛乳パックが5本ぐらい入っていました。こんなに沢山の買い置きをするのか尋ねると、「ほとんど空だから大丈夫」と言うのです。確かに、中身があるのは1パックだけです。何故、空パックを冷蔵庫に入れるのか聞くと「臭くなるから」だそうです。確かにそうですが、水洗いして乾燥させれば、リサイクルも可能です。友人は、この僅かな家事も出来ないことが判明しました。このことは結婚式のスピーチで公開し、新婦に新郎家事不能情報の警鐘を鳴らしました。
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におい(2):ムカデ -
岐阜大学に勤めていた頃、百々ヶ峰(ドドガミネ)を裏山に従える古い公務員宿舎で暮らしていました。百々ヶ峰にはムカデが多数生息していました。当時の私は、昼休みにバドミントンを楽しんでいましたが、夏場には閉め切りの体育館で汗が噴き出しました。汗みどろのTシャツは、ベランダの二層式洗濯機に放り込み、朝が来ると水と洗剤を入れて洗濯していました。ある時、ムカデの水死体が洗濯槽をグールグ−ル回っているのが発見されました。気の毒なことに、私の汗の匂いに誘われたようです。調べてみると、ムカデは界面活性剤が付くと溺れるようです。ムカデの安全に配慮し、洗濯槽には直ちに水と洗剤を入れるようにしました。
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におい(3):散らしと握り -
プーと音がすると、音源の穴からにおい分子が放出されます。通常、この分子は悪臭ですので、多くの人は手で仰いで拡散の促進に努めます。これが「散らし」という対策です。一方、放出される分子を容器に閉じ込める対策が考えられます。通常、容器を準備していることはありませんので、手で空間を作成し、その中に分子を閉じ込め、無害な場所に放出します。これが「握り」という対策です。もう一つ極めて有効な対策があります。におい分子は、可燃性ガスとともに音源の穴から放出されますので、
即座に燃焼させれば、有機成分は処理できます。有効性は都市ガスの燃焼で確認されていますが、点火時の安全に配慮が必要です。
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におい(4):季節のにおい -
秋のにおいが一番好きです。秋の霞が関界隈の歩道は、銀杏の実で埋め尽くされます。踏むと強烈な匂いが自宅まで着いてきますが、匂い自体は悪くないと思っています。東京には、金木犀が結構あり秋を感じます。冬の匂いは柑橘系です。中でも、土佐文旦の香りは群を抜いています。味も抜群です。文旦の皮を玄関に置くと、帰宅時に幸せな気持ちになります。春の匂いは定番の花の香りですが、残念ながら花粉症のため、5月の連休明けまでは匂いを楽しむことができません。5月末になると、自身の汗の臭いに苦しみ始めます。不幸なことに、臭いは夏の終わりまで続きます。
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におい(5):獣の巣 -
私がWEB会議に使っている部屋を、妻は「獣の巣」と呼びます。獣の臭いがするそうです。部屋の中を見回すと、早朝の散歩で汗みどろになったTシャツとトランクスが、WEBカメラから見えない所に干してあります。ジーパンや短パンもぶら下がっています。これらが獣臭の発生源と考えられます。9階のマンションにムカデは来ないと思いますが、洗濯が始まる明朝まで全自動洗濯機に入れておくのは、別のリスクがあります。WEB会議で獣臭が伝わることはありませんので、WEBカメラの操作を誤らなければ大丈夫です。
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