日本材料学会コラム〜自家用車〜
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自家用車(1):狼の皮をかぶった羊
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大学の先輩が乗っていた日産チェリーの乗り味が好きで、自分で買うのは前輪駆動(FF)車と決めていましたが、後輪駆動(FR)派の父が大反対でした。就職したばかりの1983年の自家用車購入には、父の援助が欠かせずFRを探したところ、
カローラ レビンAE86が売り出されたところでした。もちろん、DOHC16バルブ130馬力は高嶺の花です。カタログをよく見ると、OHC8バルブ83馬力のAE85がお手頃価格で、新技術の
4速ロックアップ付ATです。幅広扁平タイヤを友人から手に入れ、狼の外観は出来上がりましたが、中身は羊のカローラです。しかもパワステなしで据え切り不能車でした。最終的にはベアリングがタイヤに負けてガラガラ鳴り始めました。車は純正で乗るに限ります。
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自家用車(2):点検に注意 -
アメリカでの留学生活には自家用車が必須で、
ポンティアック レマンズ(1988年モデル、韓国製)の中古車を1989年6月に購入しました。最初は順調に走っていましたが、エアコンが壊れていたので、購入したディーラで点検と併せて修理してもらいました。これで安心と思って高速道路を走っていると、オーバーヒートしてエンジンから蒸気が上がりました。開けてみると、ラジエータにエアコンホースが接触して、穴が空いていました。何とか高速を降りてAAA(アメリカ版JAF)に電話をしましたが、Where are you?と聞かれてWell, I don’t knowと答えてしまったことが忘れられません。点検後に初期故障が懸念されるのは常識ですが、当時はその知識がありませんでした。点検には注意が必要です。
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自家用車(3):使えなかった装置 -
1991年の
シビック フェリオVTi価格交渉終盤に、免許取立ての妻が「尻尾が欲しい」と言い出しました。リアスポイラーです。効果が出るほど速く走りませんし、洗車も面倒です。格好いいので付けましたが、有効な装置とは思えませんでした。一方、VTECと呼ばれるエンジンバルブの開閉を変化させる装置は期待していました。ところが、切り替わるのは4800rpmと高く、私が9年半運転していたときに切り替わったのは1回だけです。それも、急な登り坂で1秒間ぐらいでした。フェリオには、エアバッグとアンチ ロック ブレーキ(ABS)も付けました。ABSは雪道で急ブレーキを踏んでみて作動確認しましたが、幸いにも、どちらのお世話にもならずに済みました。
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自家用車(4):マニュアル操作 -
東京に転居して妻が車を卒業したので、2001年から
ヴィッツRSマニュアル5MTに乗り始めました。ダブルクラッチでエンジン側とタイヤ側の回転を合わせてシフトダウンすると、シフトレバーが吸い込まれるように変速でき、自己満足が得られます。当時、地球環境に配慮して、停車時にエンジンを停止させる装置が人気となり、私はマニュアル操作でアイドルストップを実現させました。赤信号で止まると、ハンドブレーキON、ライト、ワイパー&エンジンOFFです。青信号になると、クラッチOFF、セルを3回転、1速にシフト、ライト&ワイパーON、ハンドブレーキOFF&半クラッチで素早く発進します。アイドルストップの効果は僅かです。やはり、マニュアル操作は自己満足のためでした。
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自家用車(5):使わなかった装置 -
マニュアル操作に飽きた私は、2012年に全自動の
プリウスに乗り始めました。加速時以外はエンジンOFFです。減速には、発電してバッテリーに充電する回生ブレーキが使われています。冬場に暖房を使おうとすると、エンジンの冷却水を暖めるためにエンジンONとなります。燃料を無駄にしないために、バッテリーに充電します。やがてバッテリーは満タンになって回生ブレーキは使えなくなり、ディスク ブレーキから摩擦熱を放出して燃費が悪化します。仕方なく、暖房は諦めて、膝掛けをして運転することにしました。夏場のエアコンは電動式ですが、やはり燃費が悪化しますので、冷房も諦めて早朝と夜の走行を心がけました。プリウスのエアコンは、殆ど使わなかった装置です。
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自家用車(6):怖い顔 -
2022年に購入した
ヤリスを見た91歳の母は、「えらい怒っちゅうねえ」という感想でした。車の顔が怖いのです。最近の車にはLEDライトが採用されるようになり、顔つきは大きく変わりつつあります。どうも怒った顔が多いようです。電気自動車はラジエータがないので、マスクを付けたようにも見えます。テスラCEOの影響かもしれません。ヤリスと同じような寸法ですが、2001年に購入した
ヴィッツは、可愛い系の顔でした。シビックに比べて無理な割り込みをされるなど、「なめられている」と感じましたが、ヤリスにはそのような傾向がありません。怖い顔は安全装置の一種と考えられます。人間の顔も同じかもしれません。
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