まず,客観的な幸せの大きさHを時間tの関数H(t)と定義します.貯蓄家ならH(t)は預金残高,メル友好きならケータイメールの月間着信数,受験生なら模擬テストの成績みたいなものと思ってください.本人が感じる幸せの大きさは第三者とは異なりH(t)をtで微分(dH/dt)したもの(一定時間あたりのHの変化量:Hのtに対する傾き)ではないかと思います.要するに,貯蓄家は預金残高が増えていれば幸せを感じると思いますが,傍目にお金持ちでも預金残高が減っていたら,本人は不幸せです.
出会いはdH/dtを急激に変化させます.例えば,転職して給料の良い会社と出会えば,月々の貯蓄に回せる金額を急に増やすことになります.しかし,預金残高のH(t)は急激に変化しません.また,良い塾の先生に教えてもらえるようになっても,急に模擬テストの成績が良くなることはなく,徐々に良くなって行きます.すなわち,dH/dtが大きくなって,上向きになったといえます.これらのようにdH/dtをプラスにする出会いだけでなく,マイナスにする出会いも勿論あります.この考え方から,出会いがプラスかマイナスかを判断できるのは,少し時間が経ってH(t)に変化が現れてからということがわかると思います.良い出会いなのか悪いのかは,出会いの瞬間に判断できないのです.以上の例では,お金や成績などの狭い観点から説明しましたが,以下では,H(t)をこのような内容が組み合わされた一般的な幸せの大きさと考えてください.なお,宝くじに当たったり,事故にあったりするとH(t)に急激な変化が現れます.これらは,当たりくじや事故との出会いですが,本稿では別のものと考えます.
テーマに「出会い」を選択した以上,自分の恋愛ネタは避けられません.私の結婚は23歳の年末に高知で行われた高校の同窓会に始まります.高校時代にはあまり話したことのなかった妻と意気投合し,東京で一度だけ会いました.その直後に私が交通事故に遭いました.環七を250ccのバイクで走行中,タクシーがUターンしてきて前部に衝突,バイクとともに飛ばされてタクシーを飛び越えました.幸い軽傷でしたが,中学時代に大きな交通事故に遭っていた妻とのdH/dtを大きくプラスに変化させる結果となりました.しかし,結婚すると人は必ず変わります.出会いのパワーでプラスのdH/dtを維持できるのは長くて1年でしょう.良い出会いだったかどうかは,単なる運ではなくて,その後の努力によって随分時間が経ってから決まります.
最近,出会い系サイトなどを使って,より多くの出会いを求める人が増えています.数多くの出会いはより良い人と巡り会えると思われがちですが,出会いの善し悪しは時間が経たないとわからないのです.職業によっては異性との出会いが極端に少なく例外はありますが,お互いのdH/dtを高め会える人は身の回りに結構沢山いるものです.もう一度H(t)を考えながら,まわりを見渡してみてください.